IEEFA(エネルギー経済・財務分析研究所)ブリーフィングペーパー
増加する太陽光発電が日本の電力事業の転換を後押し
2016年3月8日(火曜日):エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)が、3月9日(水曜日)に自然エネルギー財団(JREF)が東京で開催する『国際シンポジウム REvision2016自然エネルギー飛躍の時』に際して発表したブリーフィングペーパーでは、現在日本で進行している電力事業の転換によって、化石燃料は厳しい状況に追い込まれるであろうことを指摘している。
資料を記したIEEFAのエネルギー・ファイナンス・ディレクター ティム・バックレーは「日本では、新規の太陽光発電開発に年間約200億ドルもが投資されており、これは年8ギガワット(GW)分の電力が太陽光によってもたらされることを意味しています。日本は世界の太陽光発電設備導入3大市場のひとつとなっていて、まさに『日の昇る国』なのです。」と話している。
2014年に日本は世界の太陽光発電導入の3大市場のひとつだったが、翌2015年もその地位を維持した。IEEFAの概算では、2015年の日本の太陽光導入量は8GWに達している(昨年1位の中国の導入量は15GW、アメリカは概算で7.5GW導入となっている)。2015年末時点の日本の太陽光発電設備の累計導入量は概算で約30GWに達しており、2020年までに50GWを超える見通しである(2015年頭には76GWの太陽光発電設備が承認を受けていた)。
IEEFAは、さらなる増加が見込まれると見ている。太陽光発電協会(JPEA)が昨年4月に発表した戦略資料には、2030 年までに国内太陽光発電累計導入量を100GWまで増やす策が示されている。この量は、太陽光による年間発電量が110TWh以上、国内総電力需要の15%に相当することを意味する。
「目覚ましいエネルギー効率の進歩とも相まって、再生可能エネルギーが世界中に広がり、化石燃料に確かな影響を及ぼしています。」「現在、日本には47基の石炭火力発電所計画がありますが、これらの発電所はエネルギー転換によって早い段階で経済性を失う危険性があると投資家は気付くべきです。」とバックレーは述べている。
日本は、昨年の燃料炭輸入量が増加した数少ない大規模なエネルギー市場のうちのひとつであったが、このトレンドは短期的であると思われる。実際、2016年1月の石炭輸入は前年比で13.2%減少しており、2015年が日本の燃料炭輸入および石炭火力発電のピークとなる可能性は高い。
日本が過剰な新規石炭火力発電所の建設を進めれば、発電設備全体の稼働率低下を招きかねないとIEEFAは指摘する。同様の傾向は既に中国で現れており、2011年に60%以上だった石炭火力発電所の平均設備稼働率は、2015年には49.4%にまで低下していた。
インドでも年15GWの新規石炭発電所の建設が続いているが、予想を大きく下回る電力需要成長に直面している。その結果、インドの火力発電所の設備利用率は2011年の75%から、2015年の平均61%に落ち込んだ(IEEFAは、2016年にはさらに57~58%の低水準まで更に下がると見込んでいる)。
「炭素排出量削減の義務化に押され、インド、中国、オーストラリア、ヨーロッパで再生可能エネルギーのコストが劇的に下がったことを鑑みれば、新規の石炭火力発電所は早々と余剰な設備となるでしょう。」「今、日本は、新規石炭火力に投資するのではなく、風力や太陽光発電を増やしてエネルギー効率を向上させることにさらなる投資をするように方向転換できるかどうか、重要な岐路に立っています。」とバックレーは語る。
さらにバックレーは、「化石燃料輸入に依存しないより高効率な電力システムに移行することは、日本のエネルギー安全保障上不可欠であり、気候変動対策への義務を果たすだけでなく、化石燃料が重大な『座礁資産』となるリスクを避けることができるのです。」と結んでいる。
ティム・バックレーは4月7日から10日の間、日本に滞在する予定です。インタビューなどに対応することは可能ですので、ご希望の方はお知らせください。
ブリーフィングペーパー全文はこちらをご覧ください。
ティム・バックレー
オーストラリアIEEFA、エネルギー・ファイナンス ディレクター。経済市場で25年の経験を積み、そのうち17年間はシティグループにおいてオーストララシア地域 投資分析部長、業務執行取締役の要職を歴任。
Tim Buckley (オーストラリア) 電話: 0408 102 127 [email protected]
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IEEFAについて
IEEFAはエネルギーと環境に関連する金融・経済に関する調査と分析を行っています。当研究所のミッションは、多様で持続可能かつ採算性の高いエネルギー経済への移行を推進し、石炭やその他の非再生可能エネルギー源への依存性を軽減させることです。
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